2024年11月、千葉県銚子市にある市立飯沼小学校の6年生を対象に、学校が外部講師を招いて行う「出前授業」の中で、主権者教育をテーマに授業を行いました。小学生を対象とした実践は初めてでしたが、「模擬請願」のワークも盛り込み、楽しみながらも実践的な学びを届けることができたのではないかと思います。以下、レポートをお届けします。
飯沼小学校のホームページでもレポートをアップしてくださっているので、ぜひそちらもご覧ください!
飯沼っ子パワフル日記(11月12日の項をご覧ください)
https://www.city.choshi.chiba.jp/edu/school/es-iinuma/guidance/2023-1218-1332-114.html
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■授業時間:2限目~4限目までの3コマ ■児童数:16名 ■授業進行にあたったスタッフ:メイン講師1名(各テーブルの進行をサポートするテーブルファシリテーターを兼ねる)、テーブルファシリテーター1名、現役の市議会議員2名、学校の先生2名(街の人に扮して子どもたちからのインタビューを受ける役) |
今回、小学生への授業が実現したのは、僕基地が千葉県教育委員会「ちば家庭・学校・地域応援企業等登録制度」の認定を受けており、その情報をご覧になった飯沼小学校の教頭先生よりご連絡が入ったことがきっかけとなっています。
導入にあたっては、「公共について、なかなか考える機会がなく、また、教科書以外のことで専門的に教える指導者がいなかった」ことが、僕基地を使った授業にご関心をお寄せいただいた動機とのことでした。
実は、今まで、小学生高学年であれば僕基地をやってもらえるだろうという想像はしていたものの、実際にやったことがなかったため、私たち6時の公共も不安なところがありました。しかし、今回、学校のご協力もあり、3コマという十分な時間を頂戴できたこと、セイガン書ボードに書かれている多少難しい表現や漢字を小学生でもわかる表現に書き換えるなどの工夫を行うなどで、小学6年生に十分に理解してもらえる形で実践することができました。
1時間目から2時間目にかけては、ゲームのはじまりの物語を動画で理解し、遊び方の説明のあと、チュートリアルカードを使って基本的な遊び方を習得。続けてゲームをゴール目指して行いました。3人1組で協力し合いながらプレイしてもらい、なんと、6チーム中、5チームがセイガンを達成!セイガンできなかったチームも含め、みんな一生懸命集中して取り組んでいる様子が微笑ましかったです。
2時間目から3時間目にかけての後半戦では、請願後、議会ではどんなポイントで請願の採択や不採択に向けた話し合いが進められるのかなどについてミニ講義をはさみ、実際にとある自治体で小学生から要望のあった事例をとりあげ、「サッカーボールを思い切りけって遊べる場所がほしい!」というテーマで、セイガン書を書いてみようという模擬請願のワークに挑戦してもらいました。
ワークを進める上では、ゲームで模擬的に触れてもらったように、街にいるいろんな人たちに出会うなかで、情報収集したり、ロジカルに考えて請願アイデアを考えていくための工夫を行いました。そこで、先生たちにご協力をいただき、公園に関係する街の人に扮してもらって、子どもたちからインタビューに答えてもらいました。
得た情報をもとにグループで話し合いを重ね、背景にある問題点を整理し、要望の理由をしっかりと説明できるように、請願書を考えてもらいました。
続いて、清書した請願書について、実際の市議会議員に対して子どもたちから発表してもらいました。2人の議員からは、どんな点が評価できるか、また改善点はどんなところかという講評を行ってもらい、請願内容に理解を示し、議会に提出するための「紹介議員」になってもらえるかどうかの判断を尋ねました。
結果、2人とも、「さらに良い提案にするために一緒に考えを深めていこう」との回答になりましたが、「危なくないようにお年寄りや小さな子ども向けのスペースを作る」「募金を集めて整備を進める」「公園の開園時間を長くする」「団体予約のルールを変える」など、具体的なアイデアがたくさん出てきたことに驚きました。
講評にあたった2人の市議会議員からは、
「子どもたちの自由な発想もありつつ最終的には時間や日程の調整などより現実的な提案にまとまっていて、さすが6年生だなと感じた。また、自分たちの目的の達成よりもそれにより他の利害関係者が困ることがないか、どうしたら全体の環境が良くなるかを考えていたことにも感心した。一番初めに『できないならもう諦める!』という意見も出てしまって一瞬ヒヤッとしたが、テーブルファシリテーターの助言もあって『できないをどうしたらできるか』『具体的に何をお願いしたらいいか』という話し合いとなったことは、ただ社会のルールで決められたことを守るだけが方法ではないことを知る、子どもたちにとって大きな気づきになったのではないかと思った。」
「インタビューや話し合いの過程でこそ個人差や行き詰まりかける場面があったものの、最後には仲間で意見を出し合いルールの整理や改善策の提案をきちんとまとめることができており、こちらも甘めの査定をするのではなくきちんと実際の請願の相談を受けるなら…という気持ちにさせられた。本来はこちらから無責任な提案内容にならないように議論を誘導することを想定していたものの、自分たちで自然と建設的提案となるように意見を出せていて素晴らしかった。マスコミなどだけでは遠い存在に感じてしまう「政治」「行政」「議会」、そして「請願」という手段を具体的なイメージとして感じられたではないかと思う」
という振り返りがありました。
授業をご覧になった先生たちからも、
「ボードゲームは、考えながら進めなくてはならなかったので子どもたちもとても楽しんでいた。請願について考える機会はとてもいい体験であった」
「期待以上の成果が得られた。子どもたちが、私たちが思っていた以上に自分たちの考えをもって発表できていた。身近な問題を一生懸命考えている姿がすばらしかった。難しい問題だからこそ、子どもたちが自分たちの力で乗り越えようとする態度が身についた。座学では教えにくい内容も、ボードゲームやロールプレイにより、子どもたちは実感をもって学ぶことができた」
といったお声をいただくことができました。
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「できるだけ多くの刺激を子どもたちに与えたい」という考えのもと、様々な出前授業を重ねられている飯沼小学校。
今回の授業が、今後、子どもたちが、自分たちの住む街や社会に向けてより深く関心を持ち、よりよい地域づくりに向けて、具体的な行動を起こすことができる、そんなきっかけになったらと願います。
より若い世代から主権者教育に取り組む実践の場を与えてくださった飯沼小学校の先生方に、深く感謝いたします。
《児童のアンケート結果(感想や学んだこと)》
●子どもでも、セイガン書を書けば、自分のたった一つの意けんで、町が、自分たちがうれしいいように変わっていくかもしれないんだな、すごいなと思った。子どもでもある意味、政治に関わってくるなと思った。
●セイガンを通して、僕らのねがいごとを実現してくれること、たくさんの人と協力して叶うことがすごいなあと思いました。最初は難しそうだな、どんなルールかなと思いましたが、やっていくうちにだんだん慣れ、スタッフの悦明が分かりやすかったです。今日の経験を生かしていきたいです。
●ルールを変えてほしいときはいろいろな人がかんけいするので、時間がかかるのだなと思った。
●セイガン書は思っているよりとても難しかった。議員の方がきびしくしてくださったおかげで、セイガン書を提出するときはこういう感じなんだと、わかりやすかったです。
●今度、セイガン書をじっさい書いてみたい。書けば誰でもさいたくしてくれはしないけど、意見がいろいろでてよかった。
●ボードゲームでは色んな人の役職の人がいて勉強になった。
●改めて日本が国民主権であることを学んだ。ゲームでしくみなどがよくわかった。